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わたしは愛される実験をはじめた。第50話「モテる女のスリリングなLINEの作りかた」

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【読むだけでモテる恋愛小説50話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが甘えた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第50話「モテる女のスリリングなLINEの作りかた」

 ぷるぷる手がふるえていた。

 ひとり暮らしの部屋のなかでスマホを手にしていた。感慨ぶかかった。誘われるのを待つだけだったパンケーキ女が──自分からイケメンを狙いにいくなんて。

 そこで死にかけのカバみたいに、はあはあ息が荒くなってるのに気づいた。われながらキモかったので、いったん、なぜか冷蔵庫の奥にあったヤクルトを飲みほした。座椅子にかけて肩をぐるんとまわした。

 パンケーキ女なりに整理してみよう。いつだって自分と相手のポジションを確認して、どう行動するのがベストなのかを考えるべきだから。恋愛の失敗は、自分がなにをしているか理解してないときにやってくる。

 私はテラサキさんとのLINEをみかえした。京都駅近くの屋台村〝京都タワーサンド〟について盛り上がっているところだった。

『京都の有名店をつまみ放題』テラサキさんのLINEだった。

『大人になっても楽しいやつじゃないですか』私は返信した。

『ほんとそれ。軽く飲みすぎた』

 そこで私が既読スルーして終わっていた。

 あえて「ぜひいきましょう!」と食いつくことはしなかった。むしろ〝スカす〟ことにした。男性の誘いを──あからさまに誘ってなくてもそれっぽい話題を──スルーするという恋愛認知学のテクニックだ。相手はタイガー(モテる価値の高い男性)だ。こいつも他の女とおなじなのかと思われることをさけたかったから。

 ここから、なんて送ればいんだろう?

 あれこれLINEに文章を打ちながら考えようと思った。とはいえ、テラサキさんに間違えて送信なんて、ザ・パンケーキ女みたいな失敗はしたくなかった。想像するだけで顔が赤くなる。そこで目にとまったベニコさんの画面をひらいた。

 そこに『こんばんは』と打ちこんでみた。画面をながめる──たぶんダメだ。いきなり距離ができた感じがする。他人行儀というか。せっかく盛りあがった空気感を台なしにしてる。

 とはいえ代わりのアイデアも浮かばなかった。

 そこで『めちゃくちゃ好きです付き合ってください』と打ちこんでみた。おもわずニヤニヤしてしまった。『俺もだよ』みたいな返信がくるんじゃないかみたいな妄想がひろがった。なんだったら新婚旅行のセブ島の夕暮れどきの海岸でサンダルをぬいで白い砂浜にふたりの足あとをつけてその上を波がゆれるところまで想像した。

 私はよだれが6リットルくらいでるのを禁じ得なかった。そして、頭にホイップクリームのつまったパンケーキ女の妄想力のあまり、もう一度、テラサキさんのアイコンをながめたくなった。あのイケメンを拝みたい──われながら完全にキモい。

 その欲望にむかって指が動いた。しかし神は残酷なり。半分くらい我を失っていたのもあるかもしれない。まちがえて送信ボタンを押してしまった。

『めちゃくちゃ好きです付き合ってください』

 私のアホみたいなLINEが画面にあらわれた。ブラの内側に汗がしみた。テラサキさんでもなんでもない人に告白してどうするんだ。

 いや、大丈夫。LINEには送信取消機能がついているから大丈夫──じゃなかった。その希望を粉砕するように速攻で既読がついた。

『アホなの?』

 当たり前だけどベニコさんからだった。ぽっちゃり体型ながら、ワンカールした黒髪、欧米風メイク、あいかわらずアメリカンドラマのキャリアウーマンという感じなのだろう。

『アアアアアアア』めっちゃ恥ずかしかった。時間が三十秒もどるなら今月の給料を三条木屋町の高瀬川に捨ててもいいと思った。『これはちがうんですほんとに』

 ベニコさんから返信があった。

『だから、あんたはパンケーキ女なのよ』

 その表情が目の前に浮かぶようだった。私は今度からベニコさんとのLINE画面を練習帳に使うまいと決めた。

 テーブルのお茶を一気飲みした。気をとりなおしてLINEの返信についてたずねた。

『パンケーキちゃん』ベニコさんは送信した。『この場合なにが重要だと思う?』

『いつもの〝LINEの目的はデートにこぎつけること〟ですか?』

『あら、おぼえてることに感動したわ』

『私はなんなんですか』

『そのフレーズは黄金則』ベニコさんは私の抗議を無視した。『今回も大前提ではあるわ。では〝デートに誘いだすために、この場合なにが重要だと思う?〟と質問をいいかえましょう』

『え?』私は唇をむすんで三十秒くらい考えた。『前の話題を続けることじゃないですか? せっかく京都タワーサンドの話題だったんだし。デートに誘える感じだったから』

『五十五点』

『案外低い』私は送信した。『けっこう自信あったんですけど』

むしろひとつの話題がいつまでも続くのはイエロー・シグナル

『え、会話が続くのっていいことなんじゃないですか?』

会話が続くのはいいけど、話題が続くのは危険よ』ベニコさんは送信した。『この場合は悪くないけど、それを重視するのは間違ってるわ。人間は同じ話題が続くとダレるから。新鮮さや変化がないと、脳が、つまらないことをしてると判断するのよ。パンケーキちゃんも──この話いつまで続くんだろうと思いながらLINEをラリーしたことはない?」

『めっちゃあります』

『その男との恋愛は上手くいかなかったでしょう』

『え、いつのまにか会わなくなりました。なんでわかるんですか?』

『そんなときは互いにつまらなく感じてるものだからよ』

『それって、なんか微妙に刺さりますね』

『いい?』ベニコさんは送信した。『続けたくなるLINEはスリリングなの。そのためには話題をカットしたり、チェンジする編集作業が必要よ。おちつかない子のようにコロコロ変えろといってるわけじゃない──固執しないこと。京都の鴨川に浮かぶ木の葉のように流れに乗るの。話題が変わりそうなら、ただ、その新しい話題にのっかればいい』

『そのとき前の話題はどうするんですか?』

『チェーン・ソーのようにブッちぎっていいわ』ベニコさんは送信した。『空気にもよるけど』

『それ嫌われません?』

『ならない。むしろ三つも四つも話題が平行して続くほうがモテないLINEね

 その言葉は心にぐっさぐっさ刺さった。私はついつい三つも四つも話題を並べてしまうパンケーキ女だったから。新しい話題が生まれるたびに、それまでの話題にも返さないと悪い気がしてLINEが設問をならべた小テストみたいに長くなってしまう。

『いい?』ベニコさんは送信した。『せいぜい同時に続けられる話題なんてふたつくらいよ。それすら、どこかで──新しい方が盛りあがったところで──ひとつにした方がいい。人間の脳は同時にひとつのことしか処理できないから。原則としてワンライン・ワンメッセージ。それ以上はめんどくさい』

『ワンライン・ワンメッセージ』私は送信した。『そんなこと考えたこともなかったです』

『話題をさばくものがコミュニケーションの主導権を握る』ベニコさんは送信した。『無意識のうちにポジションを手に入れることができるわ。LINEの流れは、どんどん編集なさい。いい? 無駄な話題はカット、カット、カット、チェンジ』

『はあ?』

『これが恋愛認知学の〝ディレクターズ・セオリー〟よ』

『ディレクターって?』私はテレビの横のDVDデッキをみた。そこには〝サウンド・オブ・ミュージック〟のディレクターズカット版があった。『なんか映画みたいですね』

『映画とは人生から退屈な部分をはぶいたもの』

『あ、わかるかも』

『つまりこう言い換えることもできるわ』ベニコさんは送信した。『私たちの人生は退屈な部分をはぶくほどドラマチックになる』

 耳もとでカタカタ映写機のまわる音がした。毎日を生きていて、昨日のような今日、今日のような明日がくることに不安になるときがある。このままじゃダメな気がして。そんなときはヨガやボルダリングをはじめたり、スタバのコーヒー教室や、ジムに通えば、なにか変わるかなとか──いまだに挑戦できてないけど。

 けれど人生を楽しくするって、もっとシンプルなことなのかもしれない。思ってる以上に、もっと簡単に、人生はドラマチックにできるのかもしれない。まだ言葉の本当の意味はわからないけど大切なことを教わった気がした。

『そしてLINEに必要なのは話題を続けることなんかではない』ベニコさんは返信した。『いまこそパンケーキ女のためにLINEの本質を教えてあげるわ。これを理解しないと現代の恋愛はむずかしいでしょうね』

■今日の恋愛認知学メモ

・LINEでいつまでも同じ話題が続くのは危険。

・複数の話題をラリーするのも危険。原則としてワンライン・ワンメッセージ。

・【ディレクターズ・セオリー】話題が楽しくなるように、カットや、チェンジする立場になる
ことで主導権をにぎる。

・LINEの本質って──めっちゃ気になるんですけど。

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」
第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」
第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」
第25話「モテる女はさらりと男から共感をひきだせる」
第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」
第27話「愛されたいなら二次会にいってはいけない」
第28話「合コンの夜にLINEを送るとモテない?」
第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」
第30話「まだ男は浮気しないと信じてるの?」
第31話「モテる男に挑戦する? モテない男を捕獲する?」
第32話「恋愛の失敗は、自分がなにをしているか理解してないときにやってくる」
第33話「優秀で私だけを愛してくれるオスはどこにいる?」
第34話「私たちは想いを言葉にすることで愛される女になる」
第35話「モテない男を捕まえるためにメイクより大切なこと」
第36話「なぜあの女はハイスペック男子に選ばれたのか?」
第37話「男との会話を笑顔で逃げる女がモテない理由」
第38話「男の機嫌をとるためだけに笑ってない?」
第39話「恋愛対象外の男子に失礼にふるまってない?」
第40話「恋愛対象外の男子に失礼にふるまってない?」
第41話「モテる女はLINE1通目から男心を罠にかける」
第42話「暴走しがちな恋愛感情をおさえるマインドフルネス?」
第43話「いい男はよってこない、いいよってくる男はつまんない」
第44話「LINEで絵文字を使うほどモテなくなる?」
第45話「LINEは疑問符をつければ返事がくると思ってない?」
第46話「男に未読スルーされないLINEを作ろう上級編」
第47話「男の誘いLINEに即答でのっかる女はモテない」
第48話「男の誘いLINEに即答でのっかる女はモテない」
第49話「愛される女は自分ばかりを愛さない」
第50話「モテる女のスリリングなLINEの作りかた」
第51話「彼と距離を縮めたいならLINEで〝悪口〟を共有する」

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浅田 悠介

マジシャン。ツイッターで恋愛について語りまくってます。アイコンをおすと飛べるよ。

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